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先週、つれあいが泊まった増富温泉で、
冷泉につかりながら常連客から聞いた一匹の犬の話。
その宿には3年ほど前まで、犬が飼われていた。
宿の主人が山菜採りに山に入った時、
遠巻きにクークーと鼻を鳴らしながら、
あわれな目で主人を見つめる捨て犬がいた。
かわいそうに誰かに山に捨てられたのだろう。
犬が好きな客ばかりでないし、衛生上も
旅館で犬を飼うことは問題があるかもしれない。
しかし主人は情にほだされて、
ついてきたら飼ってあげるよ、と犬に声をかけた。
軽トラで山を下りていくと、後ろから必死で追いかけてくる。
動物に嘘はつけないから、旅館で飼うことにした。
人懐っこくて、誰にもフレンドリーなその犬は
愛玩犬の性格を発揮し、たちまち宿の人気者になり、
湯治客にもたいそう可愛がられていた。
ところがある日のこと、
白いワゴン車が山道をあがってくるのを見つけると
狂ったように突進して、ひき殺されてしまった。
湯治客のひとりはしみじみとつぶやいた。
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きっと前の飼い主には
白いワゴン車で山に捨てられたのだろう。
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